News Picks と箕輪厚介とヒット本のからくり
箕輪厚介という売れっ子編集者が文春砲のターゲットになり、セクハラが発覚し活動自粛。
箕輪氏は堀江貴文の本を中心に、実業家の前田裕二「メモの魔力」など売れるビジネス本を世に多数出している。
実力派であることは間違いないのかもしれないが、堀江と馬があうだけに、かなりアクの強い人物のよう。
有名人の書籍を代筆しているライターに嫌がらせ的なセクハラメールを送りつけていたことが発覚。
これは、組織の権力者>>>>>>一介の無名フリーライター という構図から生じた一件。ヤフーニュースのコメント欄を見ていると、「編集者あるある」と書いてある。明るみには出ていないだけで、原稿料不払いとか、パワハラ、セクハラが多そうな印象(業界全体的な問題?)稼げる編集者だと、益々助長するのかな?と思う。最近のお笑いの世界でも明るみに出ているが・・・
なぜ、箕輪氏はほかの編集者よりヒットが多いのか?について、一連の記事を読んだりしていて自分なりに理解したことが・・・
2017年にジュンク堂書店主催のイベントで、河出書房新社と筑摩書房の社長対談を聞いたことがある。
その時のメモをまとめると、こんな感じ。
小野寺優(河出書房新社社長)×山野浩一(筑摩書房社長)
自己紹介があり、
河出書房新社は100年以上続く老舗出版社。その昔は本棚の飾り的書籍の「百科全集」などを手掛けていて、その後は小説などにも手を広げ、田中康夫の「なんとなくクリスタル」、俵万智の「サラダ記念日」などの大ヒット本もある。今は、マニア向けのMOOK本などもあり、あれこれバランスよく出版しているとのこと。
筑摩書房の方はものごと、人間の本質を届けるような著書づくりをモットーにしているとのこと。
インターネットと本
1996年 ネット人口3.3%(この時、出版界のピークで 2兆円の売り上げ規模)
2000年 ネット人口37%(徐々に売り上げ減少)
2016年 ネット人口83%(売り上げ1兆5400億円に減少、書店数激減 4割の13000件、55の自治体に書籍なし)
ネット人口が増えるに連れて、物体としての本の売り上げは減少している。それをカバーするかのように、販売点数は増えている。
大日本印刷においては500部単位で印刷できるとのこと。そして、SNSを使った販売戦略も盛んに。
小型書店が消える一方、書店の大型化は進み、売れるものと売れないもの、が極端に。いかに初動で目立つか、がある意味勝負。ロングセラーも減っている。そこそこ売れる、というのが少ない。
若い人は新聞を読まないので、新聞広告も効果がいまいち。若者はSNS(TwitterやInstagram)などで発信し、口コミで売れるものも多い。
昭和時代は「良い本を出して、広告を打てば売れる」のビジネスモデルが崩れた。今は、Amazonのレビューを見てから買う人が多い。
書店に来るのは、本が好きな人ばかり。ぶらっと本屋に来て、偶然手に取る、などの購買者が少ない。
インプレックス総研による電子書籍事情
電子書籍は、1億9000万円 76.9%がコミックの売り上げ 大手4社でシェア2/3 講談社、集英社、小学館、角川)
コミックや雑誌での売り上げが多い。文学はさほど読まれていない。今は無料コミックも増えてきており、無料で読めるネット小説も登場。
両社長とも、この環境でいかに、新人小説家を発掘し、本を売っていくのか・・に頭を悩ませているようだった。
私は、河出書房新社のMOOK本はたまに購入している。資料性と娯楽性を兼ね備えているマニア受けする本を出版されているので。こういう本はロングセラーだと思うので、ずっと作り続けてくれるとありがたい。
ここで、箕輪氏に戻す。
箕輪氏は、わりと思ったことを言うキャラで、ある意味、ちょっととんがった人を惹きつけることが上手いらしい。堀江氏からも信頼が厚いということで、堀江信者にも支持されている様子。Newspicsの編集長であったが、自身のファンを集めて、個人的な有料会員サロンを開き、そこで新刊本を宣伝する仕組みを作り上げた。Twitterでオススメ!と拡散してもらったり、発売前のAmazonサイトで本の高評価をつけてもらう。評価の高い本は、週刊売り上げで上位にランキングするので、人の目に留まりやすい。なので、「売れている本をチェックしたい」層に購入される可能性が高い。Amazonで売れている本は、一般の書店の平積みにもなる。こういう好循環を作り出すことにより、ヒット本を出しているんだなーと思った。Newspicsの会員数は結構なもんだと思う。その数%がファンになってくれるのは大きい。
彼は自身のサロンの事を「いけす」と表現していた。つまり、糸を垂らせばすぐに食いつく魚がたくさんいる場所、という意味。別名ファンクラブとも言う?ツイートはホリエモンからも信者向けに発信され、爆発的な瞬発力で拡散する。
要はスタートダッシュで本を売り切り、重版に継ぐ重版になったと「売れている実績」を作り出す。「そんなに売れている本なら、ポチっとしなくちゃ」と思わせる。
Amazonレビューは、自分としても本を選ぶ前に参考にすることが多いが、この件で、レビューがあまり参考にならない本もあるんだな、完全なサクラではないけれど・・・と認識を改めた。
今の時代、そこそこの内容であれば、意図的にヒットを生み出しやすい時代なのかも。ただ、ヒット本が本当に有益なのかどうかは、自分で判断するしかない。
最後に、堀江氏や箕輪氏になぜファンがつくのか?結構人のことを小馬鹿にしていたり、口も悪いし、嫌いな人も多いとは思うのに・・。
要は「成功した人」にあやかりたい心理かなー?と思う。堀江氏なり、箕輪氏なりのマインドを手に入れれば、自分も彼らみたいな成功ができるのでは? 本代は高くてもせいぜい2000円くらい、誰にでも躊躇なく買える金額。「読まないと」と思わせる。
お金があれば、特に男はモテるのは間違いないし、世の中からも一目置かれて、誰に会っても「稼げる俺、価値ある自分」に自信が持てる。そうこうしているうちに、勘違いしちゃう人がいるんだろうな~と思う。